「インクス流!」(前編)

今日の朝日新聞のbe on Saturdayで「インクス流」の著者、山田眞次郎さんが紹介されています。
ちょうど昨日まで読んでいた本を読み終わったので、「旬に遅れないように」積んであった中から順番を変えて、今日から「インクス流」を読むことにしました。
山田さんが三井金属時代にデトロイトで仕事をしている際、日米の時差を生かして交代24時間制を敷き、通常4日ほどかかる設計変更を金曜夕方の打ち合わせ後月曜朝に完成させるようなことをしていたというようなエピソードから始まっていきます。これは私も時々思います。昼開発して夜テストにすれば時間の無駄がないのにな、と・・・。
金型で大量生産するような製品の開発は、設計者が図面を描き、図面から試作職人が試作品を作り、金型職人が金型を作るそうです。このくだりでは、「設計の描いたいいかげんな紙の図面をもとに(設計者の方は誰でもこのことを自覚しているはずである)、試作や金型を作ってくれる世界一の職人さんが・・・」とあります。そしてこれを24ヶ月で20回行ったそうですが、これはXP祭りのEXPの話にあった試作工程でのXPを思わせます。とにかくフィードバックを繰り返してレベルアップさせていかないと本当に納得のいく製品はできないのだろうなと思います。で、紙の図面は所詮内部の意思連携のためのものだから力の入れ加減には相応の差があるのだろうなと思いました。結局紙の図面を不要にすることがインクス流になっていくわけですし。
さて、山田さんは最初三井金属で三次元CADを立ち上げたときは1年かかったそうですが、クライスラーではそれを3ヶ月で行ったそうです。その違いの一つとして設計者の役割の違いを挙げています。アメリカでは、設計者と、図面を書くドラフトマンは別で、ドラフトマンは必要とされる図面をかけなければ職を失うので、三次元に切り替えると言われたら必死でそれを習得しなければなりません。それに対して、日本の設計者は構想も練り、技術計算もし、打ち合わせも行い、図面も描くので、面倒くさい新技術を習得するよりもやり慣れた図面で仕事をしようとしてしまう、ということです。なるほど、そういう面はあるかもしれませんし、外部の契機というのは必要かもしれません。ただ、なおさら思うのはオープンソース等で自分の意思で改革をしようとする人たちがいるというのはすごいことだなと。
今日読んだ中では最後ですが、モノの売れ方の変化について書かれています。携帯にしろ、プレステにしろ、今年だったらiPodでしょうけど、モノが売れていないわけではなくて、ただ、商品のライフサイクルが短くなっている、携帯も車も半年たったら売れなくなってしまうという世界になっているということです。
すなわち「旬の瞬間、人がまだ持っていないモノ」でないといけないということです。
で、自分の仕事について。
例えば、今、超短納期、と言っても1ヶ月ですが、グループウェアのカスタマイズをしています。しかし、私の気持ちの中では、本当は3日でやりたい仕事だなと思います。というのはそれはあまり本質的な仕事ではないから。そういう仕事はパッと終わらせて、「旬」を突いていきたいわけです。
例えば、ブログを商売にできているか、というと全然できていない。流行語に選ばれたらあとは沈静化していくだけだと思いますが、1年前にもっといろいろできたのにと思うと歯がゆいです。
本の中で、しばしばITは産業ではなくエンジンだ、という話が出てきますが、そのとおりで、一部例外を除いて多くのITシステム構築は他社の産業を推進するエンジンを作っているわけです。本当に推進できる仕事をしていきたいと思います。

インクス流!―驚異のプロセス・テクノロジーのすべて
4478200823山田 真次郎

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